さて、今回の新入荷はハヤカワ文庫を中心に、国内作家20点です。
素直に「ハヤカワ文庫JA」といえないのは、初期の「ハヤカワ文庫SF」と未分化だった頃の作品が入っているから。
おまけに刊行当初の「ハヤカワSF文庫」名義だった頃のも混ざっていたりして……ややこしいですなw
とまれ、ラインナップ的には割と渋いのが揃ってますので、ぜひチェックしていただければ。
さてワタクシ、遅ればせながら『巨神計画』&『巨神覚醒』を読みまして
インタビュー形式で進むテンポのいい物語と、うまい案配に配置されたクリフハンガーは確かに面白かったんですが、読みながらずーっと頭の隅に引っかかっていたのがコレ↓
「これって、丁寧に書かれたすごく出来のいいプロットなんじゃないの?」
この作品、地の文がごく一部にしか使われていないので、情景描写も感情表現も、基本的にはセリフに頼っています。
つまり、本来読ませどころであるはずのロボットの存在感や戦闘の迫力、登場人物の微妙な感情の機微などが、ほぼ簡易な口語表現で「説明」されているのです。
うーむ……
面白いのは前述の通り認めるんですがね……
というモヤモヤを抱えた状態で、ワタクシ、比較の意味でこれまた独特な形式の『イルミナエ・ファイル』を積ん読の山から取り出してまいりました。
『巨神~』はインタビュー形式でしたが、こちらはコンピューター(AI)内の公文書やら通信記録やらで構成されているという作品。
当然、情景も感情も報告書やメールのやりとりで描写されています。
ただ、それだけでは表現が弱いと感じたのか、途中からタイポグラフィーで動きを「読ませよう」と努力していたりもして、なかなか微笑ましかったりするのですがw
で、こちらの読後感なのですが、面白かったです。
『巨神~』も面白かった。それと同じ意味で面白かったです。
そして、同じく地の文での描写がほぼないことに物足りなさを感じました。
ワタシ自身、比喩やらなんやらが延々と続くような情景描写や、一人語りを何ページも読まされるような小説は好きではありませんが、それでも地の文の描写ってのは絶対に必要だと思うのですよ。
読みながらこっちの想像力が刺激されるのは、もっぱら上手く書かれた地の文だったりするわけですから。
それがない作品って、ワタシにはやはり映画の「プロット」にしか思えないのです。
両作とも映像権が売れているそうですが、それもよく分かります。
描写の足りない作品って、要は別のクリエイターが補完する余地の多い「スキのある作品」って事です。
足りないところは実写映像やCG、役者の演技などで補えばいいのです。
ただ、それって小説としてはどうなのよ? とワタシなどは感じてしまうのですが……
なんか書いているうちに貶してるっぽくなってしまいましたが、どちらも面白かったってのはあらためて言っておきたいです。
『巨神~』は3作目も読むと思いますし。
ただ、ワタシが小説に求めてる満足感とは根本的に違うんじゃない? てことです。
前述しましたが、映像にすごく向いていると思います。
読みながらプロットって言葉が出てきたのは、そういうところに由来してるんじゃないですかね。
で、コレを書いているうちに、
最近のラノベってこういうところがあるんじゃないだろうか?
という考えが頭をもたげてきたのですが、そっち方面にあまり知識がないのと、それを言い出したらキリがなくなりそうなので、そのあたりは機会があったらまたあらためて。