入荷情報+“ロボット操縦演出”について考える(その2)

今回もハヤカワ文庫SF、25点の入荷です。

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ラリイ・ニーヴンの「ノウンスペース・シリーズ」を中心に、スペオペのシリーズものなどを集めております。

整理していたら思ったよりもダブりが多くなってしまい、作品点数としては少なくなってしまいましたがご了承ください。

 

さて、ということで思った以上に難儀している記事の第2回目です。

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3.近年のロボット操縦演出のトレンド

こんな長文を書いている時点でお分かりのとおり、ワタクシ、ロボットアニメというジャンルが大好きです。

で、当然ながら長年にわたってこのジャンルを観ているわけなのですが、ここ何年か、ずっと気にかかっていることがあります。

最近の作品では、パイロットがロボットを操縦しているのでしょうか?

もちろん近年でも、ロボットのアクションシーンではコクピットに座るパイロットの姿が挿入されて、彼が操縦しているのだというモンタージュは作られています。

ですが、そこで描かれるパイロットは、かつての「ガンダム」のようにペダルを踏み、レバーを動かしているでしょうか?

ただコクピットから半身を見せているだけのシーンが多くはないでしょうか?

近年のロボットアニメでは、パイロットの大きな役割はコクピットの中で台詞を話すことです。

たいていの場合、彼(彼女)のアップ(もしくはミドルショット)の後はそのままロボットのアクションシーンへとつながっていき、パイロットが具体的にスイッチやレバーを操作するシーンは挿入されません。

パイロットがロボットを動かしている具体的なシーンは、いまではほとんど見られなくなっているのです。

これは、視聴者のリテラシーが上がって、特に操作シーンを入れなくても、ロボットがどのように動いているのかは分かるようになったということかもしれません。

あるいは、30分テレビアニメの制約の中で、キャラクターやメカニックをより多く見せるための必然的な省略なのかもしれません。

いずれにしても、ここ何年かのロボットアニメでは“技を叫ぶ”や“動かしているシーンの挿入”とは別の、“単にパイロットのモンタージュを挟む”演出法が主流になっています。

ちなみに、前回の最後に触れたマスタースレイブシステムは、パイロットの動きがそのままロボットのアクションになる点で、この演出法とは非常に相性がいい操縦方法です。

 

4.「ガールズ&パンツァー」は、富野演出の正当後継者だ

「トップガン」や「ワイルドスピード」のアクションシーンは、なぜ面白いのでしょう?

理由はいろいろあると思いますが、主人公たちのメカニック操作シーンが随所に挿入されていることの効果は大きいでしょう。

マーヴェリックが兵装を切り替え、ドムがシフトノブをたたき込むから、ワタシたちは彼らと共にF-14やダッジ・チャージャーを動かしている気分になり、そのアクションにハラハラできるのです。

前回も触れましたが、富野由悠季がロボットアニメに持ち込んだのは、この実写作品で用いられている演出法です。

そして、この演出法を理想的な形で継承しているのが「ガールズ&パンツァー」です。

 

「ガールズ&パンツァー」は、世間的には美少女アニメ、若しくはミリタリーエクスプロイテーションアニメだと思われています。

まぁそれはその通りなのですがw

ワタシが惹かれたのは、なによりもまず劇中での戦車操縦描写でした。

装填し、照準し、発射する。移動して、また装填し、照準、発射。

一つ一つ、細かく気が配られている戦車操縦の描写に、ワタシはホントに感心しました。

おまけに、操縦している人間の個性や練度によって、同じ型式の戦車であっても挙動が違う描写などを見せられたら、もう脱帽するしかありません。

戦車を題材にしている作品ではありますが、ここでは近年のロボットアニメでは見られなくなった操縦シーンの描写が、見事に演出されています。

 

さらに、ドラマの多くの部分が戦車内で起こるという点にも強く惹かれました。

富野アニメの特徴の一つが、コクピット(ブリッジ)内でのドラマ描写だからです。

コクピット越しに対峙するアムロとランバ・ラルや、戦闘のさなかにアムロとララァ、シャアの間に起こる精神感応、イデオンの並列シートでの会話シーン等々。

「イデオン」で一定の完成を見るこの手法は、現在に至るまで、富野氏の演出の大きな特徴として認識されています。

そしてそれは「ガールズ&パンツァー」の中でも有効に用いられ、十二分な効果を発揮しています。

終幕でワタシたちが、戦車のアクションシーンの連続にもかかわらず、車内の乗員たちの様子までも想像することができるのは、それまでに車内での彼女たちのドラマを丁寧に描写しているからに他なりません。

 

操縦の細かい描写と操縦室内のドラマ。

この2点に関して、「ガールズ&パンツァー」は富野演出の正当後継者といって差し支えないのではないかと、ワタシは思っています。

と同時に、この成功作品の演出法を逆導入するロボットアニメがいまだに現れてこないことを、ワタシは非常に残念に思っています。

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スイマセン、「ガルパン」の話は余談ですので、これだけ本文から浮いてしまっています。

どっかで書いておきたいと思っていた内容なので、無理に突っ込んでしまいましたw

 

これから、ようやっと本題の「パシフィック・リム」と『メカ・サムライ・エンパイア』の話になる予定。

次回(と、もしかしたら次々回)はもうちょっと早く上げられるのではないかと。

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